

石渡さんの声のレッスンは、 アナウンサーからおじいちゃんおばあちゃんにまで大人気!
月に100人近くもの声を聴いているという人気講師は、「私の時代にもPower of Womanがあったら人生変わっていたかも!?」というほど、
流されやすい学生時代を送っていたようです。
悩める女の子がロールモデルになることができた、いくつかのきっかけと素敵な出会い。 シンデレラストーリーかも、と控えめに語る、謙虚で穏やかな人柄も魅力的な石渡さん。 ロールモデルを探している女の子にこそ、ぜひ読んでほしいインタビュー記録となりました。
No.36
心を動かす声の力を伝えたい![[石渡智子さん]]





童謡音楽研究家 ボイストレーナー「Voce Naturale 声の教室」主宰 [[石渡 智子さん]]



Q.今はどんなお仕事をなさっていますか?
A.ボイストレーニング教室を中心に、話すことやコンサート関係の仕事を幅広くしています。
〈Answer詳細〉
日本語を美しく良い声で話すためのボイストレーニング教室を主宰しています。
自宅でのボイストレーニング個人レッスンは、童謡、唱歌、外国歌曲、オペラ、昭和歌謡、ポップスなど、ジャンルを問わずそれぞれの方に合った、身近で親しみやすい歌を使ったオリジナルのメソッドで行っています。
他にはアンチエイジングのための、中高年向けグループレッスン、お子さん連れでもOKの若いおかあさんのためのグループレッスン、そして「みんなで歌う健康コンサート」も、月に2回ずつ行っています。
歌以外には、クラシックコンサートの司会やナレーション、朗読など、依頼があった時には台本制作からお受けしています。コンサートの企画プロデュース、ステージマネージャー、事務局など、コンサート事業、運営にも携わっています。
幼稚園のPTAや団体の講習会での講演の依頼をいただくこともあります。
Q.個人レッスンにはどのような方がいらっしゃるのですか?
A.プロフェッショナルな方から就職活動中の学生さんまで様々です。
〈Answer詳細〉
NHKでニュースを読むアナウンサー、ラジオの解説者、ヨガの先生や心理セラピスト、企業研修の講師など、声を使うお仕事の方の他、就職活動の学生さん、お声の出づらい高齢者の方など幅広い方が私のボイストレーニングに通ってくださっています。
ピアノの伴奏で楽しく歌うことが目的の方もいますし、ひたすら仕事用の発声練習が中心の方もいます。柔軟体操、呼吸法、表情筋のトレーニングを通し、体も心もほぐして気持ちよく歌っていただくことによって、歌や話し方の上達だけでなく、すべての方の心のアンチエイジングも目指しています。
Q.本当にたくさんの仕事をされてますね!学生の頃から目指していたのですか?
A.いいえ全く。学生の頃は、ごく当たり前に普通の良妻賢母を目指していました。
〈Answer詳細〉
4歳のころからピアノを始めました。
童謡などを歌うことも大好きでしたが、家は勉強が第一で、音楽は趣味であるという方針の家庭でした。
なので、音大に行くという環境ではありませんでしたし、ましてやそれを仕事にしようという意識は全くありませんでした。
さらにはとても古い考え方の家で、女の子は大学卒業したらすぐにお嫁に行くのが当たり前で、就職して会社で働くなんてもってのほか、という感覚でした。
今思うと時代錯誤もはなはだしい感じですが、30年以上前はそんなにめずらしいことではなかったかもしれません。
しかし入ったのは、女性の自立した生き方教育を伝統とする大学でした。
もちろんキャリア志向の高い学生が集まっています。
当然、自分の育った環境とまわりの友達の意識の格差に戸惑いました。
卒業後、まわりの友人がみんな就職するというので、何となく大手信託銀行に就職しましたが、申し訳ないことに1年で退職。
すぐに結婚しました。
親や友達など、まわりの人の意見を聞いてすぐ影響されてしまい、自分の意志ややりたいことなど深く考えない、とても幼い女性だったと思います。
Q.やりたいことが特になかった石渡さんが、まずはやりたいことを始めてみようと思えるようになったきっかけは何だったのでしょうか?
A.大学時代にお世話になったゼミの教授の一言です。
〈Answer 詳細〉
結婚して専業主婦が始まりました。カリスマ主婦めざして、お料理も家事もがんばりましたし、主人の両親にもかわいがってもらえて幸せでした。
でも、まわりの友達はみんな生き生き仕事をしていてキャリアアップしているのに、私はこれだけでいいのだろうか?と考えるようになり、大学時代にお世話になったゼミの教授に相談してみました。
すると、「あら、あなた、専業主婦、ラッキーじゃない。自分の時間を自由に融通して使えるなんて。今のうちに何かひとつ趣味を極めなさい。」と言われました。
何も仕事ができない専業主婦ということを卑屈に考えず、ラッキーと考える、これから何かを始めるチャンスと捉えることは、私にとって目から鱗でした。それからは趣味をいろいろ探しましたが、しかしどれもしっくりきませんでした。
Q.そこから、音楽をしっかりやり直そうと思い立ったのにはなにか理由があったのですか?
A.童謡作詞家の娘さんが偶然にも、私のピアノの講師となったからです。
〈Answer詳細〉
とても不思議なことなのですが、それまで何十年もずっと弾き続けていたピアノ、歌い続けていた歌は私にとって趣味という認識ではなかったのです。
趣味というよりは生活の一部という感じだったですね。結婚して1年たったころ、本気でピアノを勉強するきっかけがありました。
その時のピアノの恩師との出会いが、私にとって大事な2つ目の出会いです。
先生は、私がずっと大好きで歌ってきたある有名な童謡の、作詞家の娘さんだったんです。その出会いをきっかけに、私の中に小さいころから流れていた童謡への憧れと探究心がどんどん深まっていきました。
適当にお気に入りの伴奏を作って歌っていた編曲を、とてもシンプルで素敵だと先生がほめてくださり、いつかあなたの編曲の童謡楽譜集をつくりましょう!と言ってくださって、先生にはとても自信を与えていただきました。
編曲するにはきちんと和声学を学びたい。人前で歌うには、もっと声楽を専門に勉強したいし、ピアノももっとうまくなりたい。
この時の私は、音楽の勉強に対してとても貪欲だったと思います。
そう思った時には子どもがひとり、ふたりと生まれて忙しくなりましたが、ピアノ、声楽、合唱、和声法の勉強は絶え間なく続けてきました。
家事と子育ての合間をぬっての音楽の勉強は大変だと思われるかもしれませんが、私にとってはとてもよい息抜きになりました。
歌ったり弾いたりすることで心と体の疲れを両方癒せるということを自然に身に付けて学んでいました。音楽に全く興味がないのに、グランドピアノを買い、それを置くスペースを作ってくれた夫にも感謝しています。
Q.今のお仕事へのきっかけとなった出会いはありましたか?
A.クラシックコンサートの司会を突然頼まれたのがきっかけでした。
〈Answer詳細〉
音楽の勉強に取り組んでいた時代に声楽を教えていただいた先生がいました。
ある時、その先生が企画された教育委員会後援のクラシックコンサートの司会を頼まれました。
私の声と話し方が向いているだけでなく、
音楽についての知識があることも良かったようです。
先生はとても私を信頼してくださっていましたが、900人も入るホールでの司会でしたので、素人がただきれいに話すだけではだめだと思い、すぐプロのアナウンサーの方に習いに行きました。
これが音楽だけでなく、今度は「話し方」「アナウンス」の勉強にのめりこむきっかけでした。2002年から10年ほど、このクラシックコンサートの司会と事務局を担当させていただき、本当に良い経験を積ませていただきました。
Q.たくさんの方に歌を教えるようになったのはどうしてですか?
A.文京区主催のアカデミー講座で企画した健康コーラス講座が大好評だったのです。
〈Answer詳細〉
それまでも、近所の子供にピアノを教えたり、ご高齢の方に童謡を教えたりということはずっと続けていましたが、文京区主催のアカデミー講座で、「健康コーラス講座」5回シリーズを企画してやらせていただいたのをきっかけに、活動がどんどん広がっていきました。
子育て、介護など、専業主婦時代があったからこそ得られた音楽から得られた音楽のメッセージ。
そして、人前で「歌うこと」と「話すこと」、両方の経験から得た呼吸法と発声法が、自然とひとつにまとまってボイストレーニングの形になりました。
老若男女、どんな方にもシンプルな歌を使った発声法は有効であると信じて、情熱と希望を持って皆様の声に向き合っています。
Q.今、一番力を入れている活動は何ですか?
A.ストレスのたまりやすい若いお母さんのためのボイストレーニング講座です。
〈Answer詳細〉
私が生まれた時から、正確には母のお腹にいるときから、私には童謡唱歌が聞こえていました。
まだ胎教などという言葉もなかった50年前ですが、母はずっと童謡のレコードをかけ、私に歌ってくれました。
この幼少の経験がなかったら、今の私はなかったと思います。今の時代、最近幼児虐待や育児放棄など、悲しいニュース記事を見るにつけ、子育て中のお母様たちを何とか応援したい!少しの間でも、ホッとする時間を作ってあげたい!という思いを強くしています。
体を伸ばして、新鮮な空気をたっぷり吸って、思いっきり声を出して!そんな気持ちを込めて親子で楽しめる音楽の空間を作りました。
レッスン中はお子さんから目を離しても大丈夫なように、お子さんを見守るアシスタントさんに来ていただいていますので、お母様たちは広いホールで思いっきり声をだすことに集中できます。
素敵な歌詞に触れ、素敵なグランドピアノの音に触れて自分と向き合う時間があれば自然とお子さんに笑顔が向けられると思うんです。
お子さんと一緒に歌える童謡唱歌は、親子のコミュニケーションにもってこいのツールですから。言葉と声を磨くこと、ストレス解消の他に、お母様同士の新しいコミュニティーの場所を提供するということも、この講座の目的の一つです。
Q.夢はなんですか?
A.いろんな職業の人に歌の力を知ってもらいたいです。
〈Answer詳細〉
声を使う職業ではなくても、いろんな職業の人にも歌の力を知ってもらいたいです。例えばIT企業で、コンピューター相手に一日過ごす社員の方や、機械を組み立てるような単純作業に携わっている方など、人と話す機会が少なく悶々としてしまいそうな方。
また、お客さんと毎日笑顔で話していただきたい営業の方などの企業研修などでもお役に立つのではないかと思っています。
激務で無表情になってしまいがちな福祉施設の職員さんにも、歌を歌って心を元気にしてほしいです。
声を出すことの大切さ、声の持つ力をもっと伝えていきたいですね。
同じ言葉であっても、たとえば「ありがとう」という言葉、声の出し方によって、相手の気持ちをうーんと幸せにすることもできるし、不機嫌にすることもできるでしょう?すごい力を持っていると思いませんか。
音楽と声が持つ無限の可能性をこれからも追究していきたいと思っています。
Q.最後に読者の方にメッセージをお願いします!
A.落ち込んだときは、ハミングしてみてね♪
◆編集後記◆
石渡さんは、今回のインタビューのためにレジュメまで用意してくださり、丁寧に今までのことをお話ししてくださいました。
インタビュー前には、石渡さんが月二回行っている≪健康コーラス「花の歌広場」≫のお手伝いをさせて頂いたのですが(インタビュー記事内の写真はそれの様子です)、参加者の方々が、お部屋に入ったときからとてもわくわくされていて、石渡さんのナビゲーションに合わせて、本当に楽しそうに歌われていました。
歌うだけでなく、休憩時間には参加者同士で会話に花を咲かせている様子を見て胸が温かくなりました。“声の力は無限大”というメッセージのとおり、実際にたくさんの方を声の力で笑顔にされてきた石渡さんを目の当たりにすると、私もピアノで何ができるかなと考えさせられます。石渡さん、インタビューを快諾してくださり本当にありがとうございました!
編集担当 鷹尾仁美
